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後遺症はあるの?

中絶手術を受ける前に、最も気になるのは自分の身体への影響でしょう。

手術によってどのようなトラブルや後遺症が起こる可能性があるのか、初期と中期のそれぞれについて解説しましょう。

初期中絶手術で考えられるリスク

中絶手術で起こる後遺症やトラブルの多くは、麻酔と身体の相性、医師の技術不足などから起こります。

初期の場合は、主に子宮内への傷が原因となります。手術の際に子宮内へ入れる器具などで傷がつきやすく、そこから細菌感染を起こすことがあります。ごく稀な症例ですが、内壁に穴をあけてしまうこともあるそうです。

さらに、妊娠組織を全部取り出せず、一部でも中へ残ると、術後も長期にわたって出血が続いてしまうことに。これらの術中のトラブルは、執刀する医師の技術や経験の不足によって起こるものです。

中絶手術は静脈に点滴を行って全身麻酔で行われることが多いのですが、この時に使用する薬と患者さんの体質とが合わず、血圧の低下がみられたり、呼吸が一時的に止まってしまうことも。

麻酔のトラブルは中絶手術に限らず、あらゆる外科手術において注意しなければならないリスクです。このように、初期の中絶手術であっても、体へのダメージが大きいことを知っておかなければなりません。

中絶手術に占める事故の割合

少し古いデータにはなりますが、子宮内容除去術での医療事故の詳細として、子宮穿孔が40.6%、麻酔事故が10.5%、死亡事故の占める割合は3.8%というデータが出ています。

(昭和58年〜平成14年4月、全133件中)[1]

昭和58年から平成14年当時の人工妊娠中絶件数は現在よりも多いものでした。

たとえば平成14年度には32万9326件、平成5年には38万6807件も行われています。[2]

現在は人口妊娠中絶件数は毎年減少傾向にありますが、それでも平成28年度には16万8015件もの数が実施されました。[3]

これだけ多くの中絶手術が行われている中では、報告されているトラブルや後遺症は非常に稀なケースだと考えることもできるでしょう。しかし、割合は低くても実数としては少なくない数値がある以上、軽く考えることはできません。

以下では子宮損傷や麻酔事故などの具体的な事例を紹介します。

子宮損傷や麻酔事故の症例、死亡例

1.手術中に子宮穿孔を起こしてしまった事例

妊娠8週目の女性の例で、子宮内容物をつかむための胎盤鉗子で誤って腸管をつかみ出してしまった結果、子宮穿孔、下行結腸穿孔、小腸壊死などが引き起こされてしまったケースです。

原因としては、術前の子宮内腔方向の確認不足などが指摘されています。このケースでは、処置として小腸部分切除、子宮・結腸損傷部の結合、人工肛門増設が施行され、後遺症が残ることとなってしまいました。

2.麻酔事故による死亡例

初期の中絶手術における麻酔事故には、重大な死亡事故の例もあります。

たとえば、初診時妊娠6週の妊婦で、マスク麻酔を実施したところ、咳き込み、麻酔中止、処置、麻酔再開、呼吸停止と経過し、当日死亡してしまったという事例です。

麻酔の量や管理が適切でなく、呼吸抑制が発生したためと考えられます。

3.中絶手術での細菌感染が原因と考えられる死亡例

人工妊娠中絶の絶対数から考えれば、極めて稀なケースといえるかもしれませんが、中絶の後遺症と考えられる死亡例もあります。

たとえば、21歳の女性が右心側心内膜炎で亡くなった事例です。この件は、中絶手術の翌日から高熱と悪臭を伴う帯下を生じたもので、入院治療の甲斐もなく89病日に死亡しています。

原因菌として黄色ブドウ球菌が検出されたことや、その他の各種所見から感染性心内膜炎と確定されました。感染の原因が中絶手術であったかどうか、実際のところは誰にもわからないかもしれません。

しかし、発症が中絶手術の翌日であることを考えれば、他に有力な原因が見当たらない限り、中絶手術との関連が強く疑われるでしょう。[4]

まさか中絶手術を受けに来て命を落とすことになるとは、本人も思っていなかったはずでしょう。確率が低くても、こうした重大なトラブルや後遺症のリスクがあることを忘れてはいけません。

ここまでの事態にはならなくても、軽いトラブルや後遺症なら、当事者になる可能性は考えておいてもよいでしょう。

中期中絶手術で考えられるリスク

通常妊娠12週以降に行う中絶手術のことを指します。子宮内容除去術による中絶が可能な初期とは異なり、中期の中絶はより母体の危険度が高くなるとされています。

中期の中絶手術になると、子宮内で胎児が大きくなっているため、人工的に薬で陣痛を起こして分娩のように取り出す方法に変わります。

出産未経験の患者さんの場合、子宮の出口である子宮頸管が広がりにくいため、専用の器具を入れて広げる処置を行っておかないと、胎児や妊娠組織をすべて取り出すことができません。

その際、子宮頸管を傷つけてしまうこともありますし、とても稀なケースですが、陣痛が強くなりすぎて子宮破裂を起こしてしまうこともあるようです。

うまく胎児を取り出せたとしても、広がった子宮が通常の大きさまで戻るのに時間がかかると、その間の出血が止まらず、大量の出血へつながることがあります。

中期中絶手術では、初期手術で起こる可能性のあるリスクに加えて、子宮破裂などのさらに重大なトラブルについても把握しておくべきでしょう。中期中絶手術を安易に選択すべきではありません

中期中絶は麻酔が使えない

中絶手術は全身麻酔を使うため痛みを感じることもないし、日帰りで受けられると安易に考えている人もいるようです。

たしかに、初期の中絶手術であれば、麻酔下で実施され、問題がなければその日のうちに帰ることができます。

しかし妊娠12週から行われる中期の中絶手術は麻酔が使えません。なぜなら、前述のとおり基本的に出産と同じ形(ただし流産)をとるためです。

分娩するのに麻酔をかけるわけにはいかず、陣痛を感じることになります。

陣痛の痛みがどの程度になるかは個人差があるでしょうし、ケースバイケースだといえますが、痛みなしというわけにはいかないでしょう。

また、出産と同様の状態になることから、入院の必要性も出てきます。子宮口をしっかりと広げる必要があるため、前日または前々日から入院することもあります。

一般的な中期中絶の入院期間は3日から5日程度です。しかし、中絶手術後の状態によっては入院が長引く可能性があります。

また、人工的に流産させるのが中期中絶であり、事後の対応が悪ければ不妊などのリスクも考えられます。

何度も手術を繰り返すことが一番のダメージ

中絶手術のリスクについて、「そんなのみんなに起こるわけないでしょ?」と考えてしまう方もいらっしゃるかもしれません。

確かに、中絶手術の技術は確立されていますし、月に数十件とこなしているベテラン医師に依頼すれば、何のトラブルもなく手術を終えてくれるでしょう。

しかし、1回の手術ではトラブルが起こらなくても、2回、3回と繰り返すことで、重大な後遺症が残る場合もあります。

例えば、子宮内壁が薄くなってしまったり、手術でついた傷の部分で癒着を起こして、受精卵が着床し難くなり、将来的に不妊症へつながることがあります。

また、初産の時に早産する確率が高くなったり、分娩時の出血が多くなってしまうことも考えられるそうです。

遠からぬ将来に妊娠や出産を考えている若い女性が、中絶手術を何度も繰り返すことは、将来の自分を苦しめることになります。

残念ながら中絶手術を受けることになった方は、今回の手術が自分の身体や将来を守るため避妊について考えるチャンスと考えて、同じことを繰り返さないよう、しっかりと受け止めましょう。

後遺症を避けるためにはクリニック選びを慎重に

手術後の後遺症やトラブルを避けるために、患者自身ができることは、安全で適切な手術や処置を行ってくれるクリニックを選ぶこと。

妊婦の側や医療機関の側がどれだけ注意を払ったとしても、中絶は手術である以上、絶対に安全に終わるとは限りません。

しかし、事前準備の不足や、十分な説明がなされていない、安全確認が不十分であったなどの原因で起きる事故はなくさなければなりません。

適切な中絶手術が行われている医療機関や指定医師であれば、しっかりとクリアしていると考えられる事項としては以下のようなものがあります。

事前検査

妊娠の状態を正確に把握することはもちろんのこと、妊婦の病歴や健康状態など、中絶手術のリスクを高める可能性がある要素の確認は必須といえます。

術前処置と麻酔

中絶手術において行われる麻酔の方法、担当医師などはしっかりと定められているべきです。

麻酔は呼吸停止などの重大事故につながるおそれもあるため、過剰にならないようにすることは当然として、モニターなどによる監視などが行われているのかといった管理体制も重要です。

手術の実施と術後管理

中絶手術は、子宮やその他の器官に傷をつけないように慎重に行われるべきであり、不測の事態には直ちに適切な処置が行われるべきです。

そして、その体制が整っていることが重要となります。術後には、子宮内などの様子を確認し、麻酔が残っているために起きる転倒事故などにも十分注意を払わなければなりません。

また、感染症予防などの処置も重要です。[5]

ここに挙げたものは、中絶手術を実施するにあたり最低限必要なことの一部です。

もし、診察や説明の際に怪しい点があるようなら、考え直すことが必要かもしれません。また、もちろんスタッフの対応や実績といった点も大切なポイントです。

症例数が多く、医師や看護師の対応が親身で細やかかどうか、自分の要望や不安な点にしっかりと答えてくれるかどうか、そのようなところを十分に吟味して、慎重にクリニックを選びましょう。

参考:
[1]『安全な産婦人科医療を目指して Ⅰ.医療安全対策シリーズ-事例から学ぶ- 3.術中合併症への対応 1.中絶によるトラブル 牧野康男』日本産科婦人科学会:日産婦誌61巻9号研修コーナーN-436
http://www.jsog.or.jp/PDF/61/6109-435.pdf

[2]『平成14年度衛生行政報告例の概況 9母体保護関係』厚生労働省
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/eisei/02/kekka9.html

[3]『平成28年度衛生行政報告例の概況 6母体保護関係』厚生労働省
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/eisei_houkoku/16/dl/kekka6.pdf

[4]『症例 人工妊娠中絶後に右心側感染性心内膜炎を認めた1例』安井達他
https://www.jstage.jst.go.jp/article/shinzo1969/20/4/20_469/_pdf/-char/ja

[5]『D.産科疾患の診断・治療・管理 7.子宮内容除去術』日本産科婦人科学会:日産婦誌60巻1号研修コーナー
http://www.jsog.or.jp/PDF/60/6001-012.pdf

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